鎮魂歌(ほろびのうた)

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少しスキルが気になったので、無茶振りをしてみる事にした。 「帝、擬態もできるようになったの?試しに何かに擬態してみて?」 「そうですね……うーん…では、スキルと同じ名前のナイトになりましょう。マスターと同じ人型なら、ダンジョン外に出ても怪しまれないでしょうし。」 その言葉の後、グニグニという音が上に伸びていった。 「ふむ……こんな感じですかね?」 中性的な声が少し低くなって、男の人みたいになってる。まさか、内部まで擬態してるとか? 「帝、もしかして、肺とか声帯も擬態したの?」 「やはり分かりますか?なるべく近付けた方がいいと思いまして、この前学んだ人型の身体をそっくりそのまま。あと、キューブで見た目のサンプルを借りました。色も変えてあります。………あー……マスター、服を作っていただいても良いですか?人型で裸はいけませんよね?」 「確かに人型で裸はダメだね。キューブ、今の帝に合わせたサイズでなるべく動きやすい服を。あと、ナイトって事だから、そこそこ防御力の高い防具を出してあげて。」 『了解しました。1,250ポイントです。』 「ありがとうございます。マスター。」 ゴソゴソと着替える音がして、カチャン、という金属が地面に触れる音で衣擦れの音が止まる。 「さ、マスター。外に行きたかったんですよね?行きましょう。」 「武器は持たなくてもいいの?一応剣も作ろうと思ってるけど……」 「テンタクル達に貰います。そちらの方が、私には使いやすいです。」 「そっか。今日はみんなにも会いたいから、ダンジョンさかのぼって行こう。………あ。キューブ、車いすなんだけど、普通の肘掛椅子に車輪を付けたような感じにできない?なんというか……原点に戻った感じ。外の人に見つかったらいけないから。」 『了解しました。木製の椅子にクッションも付けます。なるべく乗り心地が良いように設計させていただきました。150ポイントです。』 「マスター、移動しますね。」 予想外にスライムの感触ではなく、筋肉質な腕に抱え上げられて、ふかふかのクッションの上に下ろされた。質量も変えられる…擬態ってすごいんだな。 「ありがとう。……んじゃ、キューブ、いってくる。」 『いってらっしゃいませ。』 俺達は、キューブに見送られながらマスタールームを出た。
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