3699人が本棚に入れています
本棚に追加
「マスター、起きてください。」
「ん………帝?どうした?」
「お客様です。」
帝に肩を叩かれて目を覚ますと、近くに少し気になる気配があった。
「どうも。寝ているところ悪いね……すぐにでも伝えたい事があってさ。」
「どうも。…で、伝えたい事っていうのは…?」
昨日の男の人…音夜さんだった。少し気まずそうに話している。
「目と脚の件なんだけど、知り合いがそういうのに詳しいんだ。一度診てもらおうと思ったんだけど………どうかな?」
「それって遠いですか?」
「そうだね………お家を1週間空けるくらいって考えてくれればいいよ。」
「1週間………」
ダンジョンはみんなに頼んできたので問題ない。1番の問題は、俺の世話を誰がするか…だ。こんな状態じゃあ誰かに世話を頼まないと見知らぬ場所ではやっていけない。
「マスター、私が着いて行きますよ。」
「でも……そんなに迷惑かけられないし………帝もやりたい事、あるだろ………?」
帝にそう言われて言い淀むと、
「私はマスターの為に生きているんです。私のやりたい事は、マスターのお側にいる事ですから。………よろしいですよね?」
そこまで言われたら断れない。俺は帝の言葉に頷いた。
「この前近くに居なかった従者さんだね。俺は音夜と言うんだ。よろしく。」
「よろしくお願いします。私は帝と。…私も同行させていただきますが、よろしいでしょうか?」
先ほどより近くに音夜さんの声が聞こえた。どうやら、帝に近づいて挨拶をしたらしい。
「もちろん。俺ではきっとリモくんに不快な想いをさせてしまうから、貴方に名乗り出てもらえて嬉しいです。」
そのやり取りの後、2人は俺の耳でも聞こえない所に行って、何かを話しているみたいだった。こちらが風上だったけど、ヒソヒソと話している音は聞こえた。今後の予定でも話しているのかもしれない。
………少し寂しい。音しかない世界は、自分を拒絶しているように思える。この状態になってから、初めてある程度人がいない状況になって気付いた。
最初のコメントを投稿しよう!