鎮魂歌(ほろびのうた)

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ズクッ…! 「ぅあ"………!」 急に胸が苦しくなった。そして、森の中にいる俺にとって見えるはずのない景色が見える。……ここは、学校の廊下だ。俺はそこでも車いすに乗っていて、膝にはランドセルがのっている。…随分小さい時の記憶の様で、俺の手も足も一回り以上小さい。 「ぅわっ!?」 廊下の段差に気付かずにそのまま降りてしまい、前に倒れ込んだ。周りに同級生らしき人達もいるが、こちらをチラリと見ただけでそのまま歩き去ってしまう。そして、廊下の角を曲がったところで大きな笑い声。 「何あれダッサ!」 「あれさ、放火魔に家を焼かれて、1人だけ助かったんだって。んで、脚を焼けた柱に押し潰されて動かせなくなったらしいよ?先生が言ってた。」 「いったー!それチョー痛い!んで、勉強が遅れるのは大変だからってわざわざ来てんの?それともただでさえ狭い廊下を占拠しに?どっちにしてもご苦労様だねー?」 まだ子どもの軽薄な言葉だったが、俺も子どもだった。胸が苦しい。大きく深呼吸をしてなんとか落ち着けると、ズルズルと車いすを引き寄せて座り直し、目的地に向かって再び車輪を回した。
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