鎮魂歌(ほろびのうた)

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次の日、俺は簡単に荷造りをした。本当に詰めるだけ。服も、しっかりと糊のきいたシャツや、折り目を正したズボンにする。ナイトが居るような家は大抵金持ちだから、こういうところをしっかりしないとバレてしまう。 「………食料はどうしようか?旅用の黒パンと、干し肉、はちみつ、お水、紅茶の茶葉を少しずつ……で良いかな?」 「そうですね。陶器は割れやすいので、木製のカップなどを持っていきましょう。」 スライムの姿に戻っている帝と相談しながら、少し大きめのトランクに衣類を、リュックサックに食料を詰めた。トランクは車いすの下に入る大きさなので入れ、リュックサックは帝が背負うか、俺の膝の上に載せる事になった。 「………これでいいか。」 「そうですね。こんな感じかと。お茶飲みますか?」 そう言って荷造りを終わらせ、一息つこうという話になっていると、肩を叩かれた。 「ん………?テンタクルか。どうした?」 触手の感触が帝と違うのですぐにわかった。膝に置いた手に、木の感触が伝わった。 「これは……短刀…か?」 「テンタクルが、護身用に持って行ってください。と言っていますよ。鞘と柄に、ジュエルスライムから譲ってもらった宝石を埋め込んであるので、とても綺麗です。」 周りを撫でると、とても精緻な彫り込みがしてあり、小さな宝石や大きな宝石が惜しげも無く使われている様子。しかも、俺がよく使っている刀に形を合わせ、ナイフではなく短刀。切れ味も良さそうだ。
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