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「さて、今日は街で一泊するよ。何か希望はある?」
ここで少しお金持ちっぽい事を言っておいた方が良いのだろうか?
「えっと……できれば身体を綺麗にしたいんですけど……」
「風呂だね。そうするとあそこか…でも湯船は共同になっちゃうよな………」
「み、帝に手伝ってもらうので、それを見られるのは恥ずかしいです……」
最もらしい事を言って、少しランクの高い部屋を要求してみる。
「うーん………個人用のシャワールームがある所なら知ってるけど……少し狭いかも?」
「えっと……帝が俺を抱えて入れるなら大丈夫かと…」
「うーん……それなんだよね。帝くんが結構大きいから、少し難しい。………共同の大浴場で我慢してもらえないかな?」
とても申し訳なさそうな声で言われてしまったので、断るに断れない。……見た目だけ、渋々、という風に頷く。
「それなら仕方がないですね……帝は大きいですから。…でも、共同の場でお風呂に入った事が無いので、ルールがわからないのですが…」
「あぁ、それは行った時に教えるよ。タオルなんかは言えば買えるし、人々の社交の場だからね。きっと楽しいよ。」
「ありがとうございます。」
ザワザワとした街の喧騒の中を進み、
「マスター、段差を登るので少し揺れます。」
と、帝の言葉通りガタガタと何段かの段差をゆっくりと登り、目の前でガチャリとドアの開く音がした。
「今日の宿はここだよ。…あ、大人2人と子どもが1人。一泊朝食付きで、風呂も使うよ。」
「かしこまりました。少々お待ちください。」
受付に話しかけ、直ぐに部屋が用意された。
「車いすの事も考えて、少し広い部屋を用意してもらったよ。」
「ありがとうございます。帝。」
「はい、マスター。音夜さん、今日の宿代として使ってください。」
「金貨!?ちょ……そんなにいらないよ!?3人で銀貨2枚と銅貨が1枚だから!」
「そうなのですか?なら、こちらを使ってください。」
「………はぁ…ありがたく受け取っておくよ。…リモくんって、本当に外泊した事ないんだね…」
「あんまりお金を使わないので……」
「なるほどね。んじゃあ、今日の夕飯は外に食べに行こう。きっと面白いと思うよ。食べ歩きだ。」
「食べ歩き……楽しみです。」
俺達は、音夜さんの後に続いて外に出た。
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