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美音は鴉達と別れ、2人が待つ広間へと向かう。
「失礼します」
戸を開けるとすでに朝餉の準備は整っており、2人とも席についていた。
「遅くなってすみません」
「何かあったのか?」
心配そうに幸村が声をかける。
「ちょっとお話をしていて…あの、鴉さんっていうくノ一の方なんだけど…」
幸村知ってる?
(知っているも何も…)
先ほど話していたばかりだ。
「鴉に会ったのか…なら丁度いいのう」
(丁度いい?なんの話だろう…)
美音は首を傾げ、ちらりと幸村の方を見る。彼にしては珍しく固い表情だった。
「そう硬くならなくてもよい。わしから一つ提案があるのじゃ」
「提案…?」
「うむ。美音よ、忍を付けてみぬか?」
「忍を…?」
今までそんなことを言われたことなどなく、不思議に思い、美音は少し考えた。
「…鴉さんを…ですね?」
「さすが我が娘じゃ、察しがよい」
機嫌の良い信玄とは対象的に、幸村の機嫌は悪く、それが美音を不安にさせていた。
しかし、信玄は話を続ける。
「美音よ、鴉を見てどう思った?」
「私が今日感じたことは空の瞳、だけです」
「…関わりたくないか?」
「いえ、その逆です」
美音は信玄を真っ直ぐ見つめた。
「空の瞳が戦によって生まれたモノなら、それをなくしていくのも、私の使命だと思っています」
決して何からも逃げないこと。美音がこの世界に来て、平和を目指す上で心に決めたことだった。
そして美音の言葉は、多少違えど、 その意思は信玄と同じものだった。
それに、と美音は続けた。
「過去の事は解らなくても、これから来る未来は変えられる。そう教えてあげたいです」
おこがましいでしょうか。
少し不安そうに信玄に伝える美音。
信玄は首を横に降り、美音の頭を撫でた。
「その気持ちが人々を救う力になる」
鴉も一緒だ。
「では、鴉を忍にしてもよいな?」
「はい」
美音が頷いたその時だった。
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