はじまり

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(気配を感じなかった…) かなりの手練れであると思いつつ、鴉は答えた。 「我の名前は鴉。主のいない、ただの忍だ」 「何が目的だ」 「目的などない。ただ奴らに追われてここまで来てしまっただけだ」 遥か下方に見える3人の忍に目をやる。 「ふぅん…まぁ嘘をついているわけじゃあなさそうだね…」 そういうと、鴉の首からくないが外される。 体の自由を許された鴉は、振り返ってその人物を見た。 目の前に広がるは太陽のような髪。 「俺様は猿飛佐助。急に悪かったね。でも早々にここから立ち去りな」 警戒を解いていない佐助に、少し戸惑いつつ、鴉は尋ねた。 「…ここはどこだ?」 「ここは甲斐の国だよ」 「甲斐…」 人に追われてこんなところまできてしまったのか 「……一つ、頼みがある」 「頼み?」 「我を甲斐で雇ってくれないか」 鴉の紫の瞳は、まっすぐに佐助を捉えていた。
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