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2人の間に沈黙が流れる。
「…一体何を考えているわけ?」
少しして、冷ややかな眼差しの佐助が言った。
「何も考えてはいない。ただここでお主に会えたのも何かの縁だと思ってな」
淡々と鴉は答えた。
「だから賭けてみたのだ」
“我を使えるか”
鴉がいうと再び沈黙が流れた。
(…嘘をついているわけじゃなさそうだけどね…)
ちらりと下に転がる忍を見る。
(この能力は厄介だな…)
傷もない死体。
鴉の瞳が紫であることから、毒を持っていることは佐助にはわかっていた。
この時点で佐助には二つの選択肢があった。
一つ目は、この場で鴉を殺すというものだった。
侵入者として危険因子は削除するというシンプルかつ正当な理由である。
二つ目は、生かして雇い主である武田信玄、真田幸村、そして武田の姫である美音に会わせることである。
「……どうするのだ?」
再び鴉が聞いた。
「…雇うかどうかは別にして、とにかく一緒に来てもらうよ」
佐助が出した結論は、鴉を城に連れていくことだった。
これは危険な賭けであることは佐助も十分承知している。
「もし何か変なことをしたら、すぐに殺すから」
そこは分かってるよね?
そう佐助は鴉に釘を刺す。
「わかっている」
「ならいいや。…さて、行こうか」
月夜の晩、二つの黒い影がならんで飛び跳ねていた。
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