はじまり

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「して、鴉の処遇だが…美音に一任してみようかと思っておる」 「美音に…?しかし、お館様それは…」 「大将、俺様も反対です。 鴉は…危険です」 幸村も同じように思ったらしく、 「某も反対です」 と彼にしては珍しく、信玄の意見に反対した。 「では、お主達で鴉を導けるのか?」 「それは…」 「……」 信玄の問いに答えられず、沈黙が流れる。 (確かに美音なら変えられるかもしれない) 美音は戦を知らない、血の穢れを知らない、それでいて、多くの人を惹き寄せる力がある。 真っ直ぐで美しい。 佐助も気を許してしまうほどだ。 「美音が断れば、この件はなかったことにする」 全ては美音次第じゃ 「…御意」 渋々頷いた幸村だったが、 (美音が断るはずがない) と思っていた。 美音は敵であれ味方であれ、手を差し伸べる。 きっと鴉とて例外ではないだろう。 (もし、血を触るようなことがあれば…) 最悪の事態が頭をよぎる。 「佐助、美音を頼むぞ」 「御意」 佐助は深く頷いた。 「失礼します」 重たい空気を破るように部屋の外から声が響いた。 「おはようございます、義父上様、幸村、佐助さん」 お膳を持って現れたのは1人の女性。 信玄の義理の娘にして、武田の姫である美音であった。 「おはよう、美音」 「おはようございまする」 「おはよう、美音ちゃん。手伝うよ」 美音の持っていたお膳を佐助が受け取る。 「…何かあったのですか?」 いつもなら自分と一緒に朝餉の準備を手伝う佐助が、幸村達と一緒にいることに疑問を持った美音は、信玄に尋ねた。 「少し、美音に提案があるのじゃ」 「提案…?」 「さよう…また後で話そう。今は朝餉の準備を」 「某腹が減ったでござる」 美音は空腹を訴える幸村に優しく微笑むと、 「わかりました」 と答え、支度に取り掛かった。 「俺様は鴉の様子をみて来ます」 そう言って部屋から消えた。 一方鴉は…ーーー
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