17人が本棚に入れています
本棚に追加
「里花っ、俺…!」
不意に、正輝は口から指を離した。
「え…?」
「俺っ……俺…里花が欲しい…!」
「……え……えっ?」
突然自分が欲しいと言われても、のぼせた頭では解釈できない。
「俺、里花の全部が欲しい……この華奢な体も…っ…心も…これからの未来も、全部…全部、欲しい…!」
光を失った、虚ろな正輝の目。
訥々と語りながら、正輝は里花の髪を撫で、頬に触れた。
縋るような、懇願するような、上擦った声が、里花の耳から頭の中へ入り込んでくる。
今、目の前に居るのは、自分を何より大切な存在だと思っている1人の男だ。
「……兄さん……」
もう、兄妹である血の繋がりなど関係ない。
「私……兄さんが好き」
「里、花……ああ……っ!」
正輝は、里花の体を抱き締めた。
華奢で小柄な体は、すんなりと正輝の腕へ収まってしまう。
「里花っ、俺も…大好きだ…愛してる…愛してる…誰よりも、里花だけを愛してる…!」
(続く)
最初のコメントを投稿しよう!