兄 × 妹

10/10
前へ
/10ページ
次へ
「里花っ、俺…!」 不意に、正輝は口から指を離した。 「え…?」 「俺っ……俺…里花が欲しい…!」 「……え……えっ?」 突然自分が欲しいと言われても、のぼせた頭では解釈できない。 「俺、里花の全部が欲しい……この華奢な体も…っ…心も…これからの未来も、全部…全部、欲しい…!」 光を失った、虚ろな正輝の目。 訥々と語りながら、正輝は里花の髪を撫で、頬に触れた。 縋るような、懇願するような、上擦った声が、里花の耳から頭の中へ入り込んでくる。 今、目の前に居るのは、自分を何より大切な存在だと思っている1人の男だ。 「……兄さん……」 もう、兄妹である血の繋がりなど関係ない。 「私……兄さんが好き」 「里、花……ああ……っ!」 正輝は、里花の体を抱き締めた。 華奢で小柄な体は、すんなりと正輝の腕へ収まってしまう。 「里花っ、俺も…大好きだ…愛してる…愛してる…誰よりも、里花だけを愛してる…!」 (続く)
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加