言い伝え

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   ハァハァハァ…  川の辺りまで来るとせせらぎが聞こえた。  生い茂る雑草を掻き分けて川辺まで行ったが、蛍は飛んでいなかった。  ……もう、寝てるよな、蛍も。  諦めて帰ろうとした時だ。 「あ~……」  女の(あえ)ぎ声が聞こえた。  俺は静かに(きびす)を返すと、息を殺した。 「あああ~」  また、女の声がした。  すると間も無く、対岸から(くさむら)を掻き分けるような音がガサガサとした。  俺は咄嗟(とっさ)に屈むと、丈の長い(あし)に身を隠した。  すると、畦道(あぜみち)に向かう男の後ろ姿が見えた。
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