10人が本棚に入れています
本棚に追加
ハァハァハァ…
川の辺りまで来るとせせらぎが聞こえた。
生い茂る雑草を掻き分けて川辺まで行ったが、蛍は飛んでいなかった。
……もう、寝てるよな、蛍も。
諦めて帰ろうとした時だ。
「あ~……」
女の喘ぎ声が聞こえた。
俺は静かに踵を返すと、息を殺した。
「あああ~」
また、女の声がした。
すると間も無く、対岸から叢を掻き分けるような音がガサガサとした。
俺は咄嗟に屈むと、丈の長い葦に身を隠した。
すると、畦道に向かう男の後ろ姿が見えた。
最初のコメントを投稿しよう!