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ピンポーン♪~
「はいはい」
ガチャッ
玄関の扉を開けると、そこには、鞄で顔を隠した女性がいた。
その人は、ゆっくり顔を見せた。…あ。
「私を置いて授業に行っちゃうなんて、酷いな~」
笑顔で話す彼女がいる。
これこそ夢なんじゃない?
「え、どうして…。来てくれたの?」
「うん。来てあげたの」
彼女は俺の住所をインターネットで調べて一人できたらしい。
部屋に通すと、しきりに一人旅の感動を話してくれた。
彼女にとっては、初めて一人で県外に出た瞬間。電車に乗り間違えたり、初めての景色を沢山見たり、ドキドキとわくわくの連続だったようだ。
「それでね、明日の朝まで泊めてください」
彼女の横には大きな水色のリュックサックと手提げ鞄。
「一応聞くけど、家出じゃないよね?」
「うん、もちろん。会いたくて来たの!」
少し拗ねちゃった。
可愛いなぁ。
「すげー嬉しい」
信じられない。
俺の目の前には、夢にまで見た愛しい彼女がいるんだ。
「うん!でさぁ、朝ごはんでも作りましょうか?」
「まじで!!」
「はい。言ったでしょ、電話で。“今は料理したい気分”って。…ねぇ、ご飯とお味噌汁で良い?」
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