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序章
子どもの頃に誰もが一度は耳にするなぞなぞがある。
人々がそれを持っていない時には、多くの人がそれを欲しがる。
だから手に入れた時には諸手を挙げて喜ぶ。
それを持っているのが当たり前になると、手放す人が出てくる。
だから、それが手元にある喜びを確認しないと失ってしまう。
誰かが手放したそれを欲しがる人は、どこにもいない。
何故ならそれは誰もが持っていないと意味がないから。
何故ならそれは目には見えず、触れないものだから。
初等教育を受ける前の幼児に答えが分かるはずはない。それどころか、なぞなぞの意味を理解するだけで精一杯だろう。しかも、問いかける大人は絶対に答えを教えない。自分で答えを見つけさせる。それが俺達の習慣だからだ。
普通に過ごせば四年で終わる初等教育を終えた頃、つまりこの世界の歴史の概要を学んだ後になって、自然とその応えに辿り着くように出来ている。
――平和。
それがなぞなぞの答え。実際、二世紀前に人類は平和を捨てて戦争を始めた。結果、滅亡を覚悟するまでにその人口を減らした……らしい。平和条約を結ぶ時に、二度とこのような災禍を起こしてはならないと喚起するために発明されたのが、先のなぞなぞと答えを教えない習慣だ。
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