転機

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 そして日曜日。 自宅の最寄駅から電車で1時間半。 そこに栄美高校と書かれた校門を見つけた。 隣にはもちろん成瀬がいる。 「なぁ、俺ら私服で来ちまったけど目立たねぇか?」  ユニフォームと野球道具一式を詰め込んだエナメルカバンを持って校門前まで来たが、どうにも周りが学生服に身を包んだ人ばかりで落ち着かない。 二人ともジャージにTシャツという格好なのでなおさらだ。 「さっさと入ってあいさつしようぜ。こんな所にいるから目立つんだよ」  成瀬はそう言って校内に入っていく。 俺も後からあわててついて行った。 中に入るとテニス、陸上、水泳……ありとあらゆるスポーツがそれぞれ専用の場所で活動を行っている。 その分異様に面積も広い。 そしてその中でも一際目立つのが野球場だった。 二つのグラウンド、ナイター施設、高いネット、屋根付きブルペン、参加人数。 どれをとっても他の部活動に比べて頭一つ抜けているようにも感じた。 野球部のグラウンドに一礼して入るとその熱を更に感じた。 ノックを受けているもの、打撃練習をしているもの、ダッシュをしているもの。 それぞれが必死の形相で一つ一つのプレーをこなしているのがわかる。 それらを見ていると端の方からこの前声をかけてきた男が歩み寄ってくるのが分かった。 俺らもその方向に向かう。 「やぁ、よく来てくれたね。栄美高校スカウト担当の阿部だ。思う存分練習を見ていってくれ」  その言葉に成瀬が口を開く。 「練習は参加することは可能ですか?」  俺は血の気が引くのを感じた。 少し見学して向こう側から練習に参加しないか、と言われるまで待つことが普通だと思うがそれを平然と言ってのけたのだ。 阿部さんは少し驚いた様子だったがすぐに表情を和らげた。 「本当は高野連の問題とかあるのだが君達が黙っていてくれれば多少はいいよ。もちろん連携や細かい所は無理だけどね」  優しい人で助かった。 俺が胸をなでおろしながら阿部さんは更衣室まで案内をしてくれた。 練習着に着替えてグランドに出ると準備運動をしてグラブを持った。 周りは練習をしているので端のほうでキャッチボールだ。 キャッチボールを開始して10分ほど。 70メートルほどの距離でキャッチボールをしていると奥から何やら怖そうな男が歩み寄ってきた。
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