プロローグのなかのプロローグ

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「にいさま、朝です、起きてください」 妹の声がうっすらと聞こえ、僕は徐々に脳を覚醒させ、ゆっくりとまぶたを開ける だが、そこに妹の姿はない 「目が覚めましたか、それでは朝食の準備を始めますので、焦らずゆっくりと降りてきてくださいね」 「ああ、わかった…」 そして妹が遠ざかっていく、足音は全くなく、気配だけか遠退いていく奇妙な感覚 妹の能力の代償 その能力のためだけに僕は家を隅から隅までリフォームした。 具体的にいうと壁という壁、床という床、天井すらもすべて鏡に変えた。 最初は常に自分の姿が写って少し気持ち悪かったが、もう慣れた 僕の妹、木崎緋奈の代償は日が落ちてから、朝、俺が鏡の中にいる緋奈に触れるまで、鏡から出ることが許されないこと。 だから僕の妹は夜出掛けることが出来ないし冬は学校が終わってから全力疾走で家に帰らないと間に合わず、間に合わなかった場合、体が徐々に鏡に侵食されていってしまう 最終的にどうなるかは知らないが、かなり危険なことにかわりはない 香月が何故代償の末路を知っていたのかは、おそらく一度殺めたことがあるからだろう 人間を とにかくこの日常的には無意味なこの能力は、その日常すらも苦しめる ちなみに妹の能力は反射と吸収、主に鏡が光を受けたときに起きる現象すべてを再現できる この能力は受け身であるがゆえに常時発動型だ その分、交通事故などはあり得ないし、刃物で刺される心配もないから安全と言えば安全だが、結局夜は出られないのでほとんど意味はない ただ、代償を払い続けるだけ そんな環境で育ったからか、恐ろしく無感情な子に育ってしまった おそらく緋奈の喜怒哀楽を正しく理解できるのは僕くらいだろう このことに若干優越感を覚えながら、僕は制服に着替え、緋奈の待つリビングへ向かう 「ご飯、できてますよ、にいさま」 「ああ、ありがとう緋奈」 「「いただきます」」 そして、何故料理を作れるのかと言えば、能力に、投影、と呼んでいるものがある、 簡単に言えば、鏡に写っているものには、鏡の向こうにいるにも関わらず、触れることが出きるというものだ
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