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「・・土方、歳三だな。」
男は刀の鯉口を緩め腰をゆっくり下ろし
ギロリと鋭い眼を細めて土方を睨み
「貴様の首を頂く。」
淡々と告げる男の言葉を合図に
ずらり相手の男たちが四人を囲む。
・・・・・。
ざっと数えただけでも十五人はいる。
「・・誰の首を跳ねるだと?」
そう、不敵に呟くと
原田は土方の前に立ちふさがり
ニヤリと挑発的な笑みを浮かべる。
「聞き捨てなりませんね。」
斎藤もゆるりと刀の鯉口を緩め
一歩前に進み原田同様、土方の前に立ちふさがると
「副長がいなくちゃ困るんですよねぇ。」
沖田は刀の柄に軽く手を置き
鼻歌を口ずさみながらまるで子供のように笑う。
先ほどの空気が嘘のように
土方の脇を固める彼等の殺気は尋常じゃない。
勿論、
「大人数でやる気満々じゃねぇか。」
彼等の少し後ろに立つ
土方も既に喧嘩師の顔をして笑う。
「ハジメ、びびんじゃねぇぞ。」
「原田さんこそ
足を引っ張らないでくださいね。」
「言うじゃねえか。」
原田と斎藤は
お互いの目を合わせゆっくりと腰を下ろし
ぬらりと刀を抜き下段に構える。
「・・土方さんは
どこにいても有名人だなぁ。」
「煩せぇぞ、総司。」
「大丈夫ですよ、
私がこれからもお守りしますから。」
沖田と土方はお互いを緩く笑い、
ザッと音を鳴らし地面を踏む。
ビュン。
夜空を切り裂く音を合図に
-バラガキ-
茨のような鋭いトゲを持った餓鬼のような奴
と、そう武州で呼ばれれていた
イロトリドリの
四つのヒカリが其々に弾け飛ぶ。
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