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俺は前に立つサーパンの様子を伺う。自分に従う仲間の存在に何か行動に出るかも知れないと思ったからだ。だが特に何かをするというわけでもなく、ザンジバルを見つめているだけだ。
一方、ザンジバルはサーパンを見つめ返すように俺達の方を見ている。その瞳には何か決心のような物が伺えた。
「何か用か?」
とりあえず見つけたら襲うってつもりではない様子のザンジバルに俺はサーパンの横に出て問い掛ける。もちろん刀には手を添えたままだ。ザンジバルは俺の方を見ると、首を横に振った。どういう意味か考えていると、ザンジバルがゆっくりと右腕を伸ばす。その指の先にはチスイが立っていた。
「あたしか」
チスイはそれが分かっていたかのように前に出る。俺は少し下がってサーパンの動向も伺いながらチスイの背中を見届ける。チスイが数歩前に出た所で足を止めるとザンジバルも伸ばした腕を下ろした。
「それで、どうするか決めたの?」
チスイの問いかけの意味は俺には理解出来ない。二人の間に交わされた会話の全てを把握していないからだ。俺には動向を見守る事しか出来ない。
「分からない」
チスイの質問にザンジバルは真っ直ぐとチスイを見て答えた。
「精一杯考えた。言われた事。でも分からない。だから…………」
頭の中で整理出来ていないのか言葉に前後があるザンジバルの話をチスイはしっかりと聞いていた。
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