獣王と末路

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「さっきのサーパンの話を聞いていた時、どこか既視感を覚えた。あれはそう、都市戦争の時、一号の所に辿り着いた時の事よ」  チスイの言っている場面を思い出す。あの時は俺、チスイ、レーラの三人で最後に一号の部屋に辿り着いた。一号の部屋ではダレオスが一号と呼ぶ機械に泣き付き、魁達がそれを傍観していた。あの時と今回、どこに既視感があるというのだろう。 「あの時も今回も、辿り着くまでに何度かの戦闘が起こった。そしてやっとの思いで首謀者の元に辿り着くとそこには事情を話せない首謀者がいる。これが偶然とは思えない。もちろんサーパンの話が本当ならって前提条件はあるんだけど」  そう言われれば確かに似ている気がしないでもない。あの時は一号が機械で起動しなかった。あの戦争の後も魁の指示で何度か起動を試みたらしいが結局出来なかったって聞いている。そして今回、サーパンは何も覚えていないと言う。どっちも結局何故という部分が残る終わり方だ。真相を解明できないこの終わり方にチスイは既視感を覚えているんだろう。 「もしかしたらこの二つは繋がっているのかも知れない。そう思うのよね」  チスイが付け足すように言った一言。当然チスイの中でも確信があるわけじゃないだろう。ただチスイに言われたからというのもあるが俺も似ていると感じる部分がある。これはおそらくこの場にいれば魁やリス達も感じる事だと思う。  神殿の入口まで来るとサーパンが足を止めた。さっきまでのキョロキョロしている感じはない。一点を見つめている視線に俺は念の為に刀に手を添える。 「どうした?」  俺の問いかけにサーパンは答えない。ただまっすぐと一点を見つめ続けている。俺はサーパンの背中越しに神殿の外を見た。  サーパンの視線の先には、ザンジバルがいた。
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