獣王と末路

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「だから、付いて行きたい」  ザンジバルの言葉はまっすぐチスイに向けられていた。いったいどういう会話が成されたらザンジバルがそういう答えを出すのか俺にはさっぱり理解できないが、何故か俺の方を向いたチスイはどこか満足そうな笑みを浮かべていた。 「仁、一人増えてもいいよね?」  チスイはザンジバルを連れて行くつもりらしい。魁達は驚くかも知れないが、チスイが決めた事ならば俺は従う。わざわざサシで無茶な戦いをしてまでチスイが引き出した答えなのだから。 「いいんじゃないか。この先どうなるかは分からないけどな」 「それでもいいのよ。自分で決めた事なんだから」  連れて行けば問題になるのは分かりきっている。バラックさん殺しの犯人として捕まる可能性もある。それでもザンジバルが行きたいと言い、チスイがそれを許すのであれば俺にはもう止められない。 「ありがと」  ザンジバルは短くそう言うと頭を下げた。チスイはゆっくりザンジバルに歩み寄るとその肩に手を置いた。 「貴方の進むのは茨の道よ。でも決して諦めないで」  チスイは言っていた。ザンジバルに過去の自分を重ねたと。この言葉はきっと、過去の自分に向けられた物なんだろう。
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