妹弟達が可愛くて仕方ないという題名の昔話

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「榧~!寂しくなかったか?ごめんなー、こんなところに閉じ込めて」 ギュウギュウと音がする程抱きしめながら、兄は榧を心配そうに見つめる。 「大丈夫。…お兄ちゃんがいてくれるから」 「なんて可愛いんだ流石俺の妹!お前の弟は兄離れでもしたのか全然相手にしてくれなくて。けどいつかまたお前達二人まとめて抱っこしてやるからなー」 「…うん」 榧は少しばかり不満げな顔をした。彼女は兄の口から弟のことを話されるときが一番嫌いなのである。自分に惜しみない愛情を注いでくれる兄は好きだが、それが自分一人だけではないことに気付かされると、どうしようもない嫉妬が生まれるのだ。 …私にはお兄ちゃんしかいないのに。 「そうだ榧、今日はお土産があるんだぞ」 フと気付いたように兄はベットに腰を下ろすと、膝の上に榧を横向きに座らせた。ズボンのポケットに手を突っ込み、小さな飾りの付いたネックレスを取り出す。 「じゃん!今日出かけたときに榧に似合いそうだと思って買ったんだ。どう?」 榧は小さな手でそれを受け取り、キラキラと輝いた目で見つめた。細かな銀の鎖に赤い宝石の小さなモチーフがあしらわれただけの、とてもシンプルなネックレス。
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