妹弟達が可愛くて仕方ないという題名の昔話

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「お兄ちゃん、これ着けて!」 「もちろんだ」 興奮気味に兄に頼むと、膝から降りて後ろを向いた。兄は受け取ったネックレスの留め金を外すと、絹糸を扱うかの如くそっと榧の首に掛けた。 「出来たよ」 「…似合う?」 「凄く似合う。やっぱり榧には赤系の色が似合うなー」 クルリと一回転をして兄にその姿を見せると、走って姿見の前に行った。そして自分でもその姿を確認すると、何度も何度もネックレスと見比べた。 その様子をにこにこと笑いながら眺めていると、ふと何かに気付いたのか無表情に戻った。 「榧」 「何?お兄ちゃん」 「人の気配が来る、おいで」 兄のその言葉にビクリと怯えたように反応すると、すぐにベットに向かって走っていった。兄も立ち上がって彼女を抱き上げると、毛布を掴んでクローゼットに向かう。 「ごめんな。また少しだけ我慢してくれ」 震えて怯える妹をそっと中に入れると、毛布を被せて扉を優しく閉める。その瞬間ガチャリと部屋の扉が開かれた。 「兄さん」 ノックも無しに部屋に入って来たのは少年だった。丁度榧と同じくらいの年のよく似た顔の少年だった。しかしさして驚いた様子もなく兄は彼の方を向いてニコリと笑う。
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