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そう吐き捨てて栴は出て行った。扉の向こう側へ遠退いていく足音に、兄は何ともいえない表情で突っ立っていた。しかしものの数秒で口角を上げ笑顔になると、クローゼットの方を見て口を開く。
「行って来ます」
不気味な程に明るい声だった。
栴は不機嫌を露わにしたまま自室へと歩いていた。頭の中で、いつも笑って「可愛い」という言葉と共に抱きしめてくる兄のことを考えながら。
彼は兄が気に食わない。
双子でありながら天と地ほどに違う自分と姉を、まるで同等の、妹弟として扱うからだ。自分がまだ特別優秀ではないことは解っている。それで弟として扱われるのは構わない。しかし将来を期待され魔法使いとして才能もある自分と、その底辺どころか素質さえないような姉が、どうして同じだけの愛情を向けられているのか。そう考えると心底腹が立つ。
怒りが別の方向へ行っていたことにハッと気が付くと、無意識のうちに手を握り締めていたようだ。立ち止まり指を広げて見てみれば、赤い爪痕が残っている。
…ああ本当に死ねばいい。
栴にとって、たかが一緒に産まれただけの存在である姉は、兄から同じだけの愛情を受ける必要はないのだ。
小さな子供は、それがただの嫉妬だと気付けない。
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