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「今年の武闘会の選抜人数が例年より少ないということで、本校より選抜する生徒を二人増やすことになりました」
生徒達は周りを見渡した後、よく分からないという顔をして担任を見つめる。ただ栴は興味なさげにぼんやりとしていた。
「三学年各一人ずつと、学年問わず後二人、教員が実力と態度を見て選びます。三年生が皆より強いのは当たり前だけど、もしかしたら選ばれる可能性もあるわ」
途端に騒がしくなるクラス。一体誰が何を喋っているのか分からなくなる程にはうるさくなった。右では自分の可能性を、左では友達の可能性を、前では投げやりな諦めを、そして栴に話しかける者は誰もいない。
「喋るな、口を閉じなさい」
担任が厳しく注意するとすぐに静かになるが、生徒達の目線は動き回っていた。
「さっきも言ったけど実力と態度を見られます。いくら強くても、よそで失礼をするような人は選ばれません」
「今更だろう」と栴は思う。実習のときだけ淑やかな態度をとったところで無駄な足掻きだ。元から実力者というのは自分も含め尊大になりがちだ。きっとこのクラスで選抜されるには、圧倒的な強さで優勝するしか方法はない。
それもきっと自分だろうが。
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