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「…は?」
間抜けな顔をしていると自分でも分かる。しかしそんなことはどうでも良いと言わんばかりに、もう一人の俺は言葉を続けた。
「とは言っても新米でね。出来ることと言ったらたった一人の為に世界を創造する程度さ」
「…世界を、創造って…」
言葉が出ないとはこういうことだろうか。両親が消えたときでさえ、こんなに呆気に取られることはなかった。言った内容に対してもそうだが、恐らく見た目が俺と同じということも関係していると思う。
「まーたそんな呆気に取られた馬鹿面を晒しているようだが、君はやはり物事を理解する機能が劣っていると思われる」
広げていた腕を曲げて手の平を肩の辺りに持って行き、やれやれとでも言うように首を振った。
「いや…いやいやいや、多分誰だってそうだと思うぞ。いきなり自分と同じ顔した奴が神様ですって、新手の信教団体か」
「アハハハハハハハハハハハ。君はとてつもなく面白いことを言うんだね。信教なんて、神がそれを行ってしまうとナルシストになるんだぜ?」
「…まぁ、確かに」
「ところで君は気にならないか?どうして神が君の目の前にいるのか、とかさ」
腕をおろして表情を厭らしい笑みに変え、首を傾げながら俺を指さしてくる。その手も手の甲を下にし、どこかおちょくっている感じがして仕方ない。
「俺はお前が神だと信じてないんだが」
「それは大変だ。偶像崇拝を勧めるつもりは毛頭ないが、せめて信心は持っていた方が良かったな」
「神様信じるくらいなら弟妹達を可愛がったもんで」
「なんと素晴らしい兄弟愛だ。だが君が死んだことは宜しくなかったようだぜ?」
「は?どういう意味だよ」
「そのまんまの意味さ。君は他人を愚直に信じる愚か者ではなかったが、最後の最後で馬鹿なことをした」
「…」
「君が命を懸ける程大事な弟妹達が、同じくらいに君を愛していてもおかしくはないと言いたいんだ」
「なッまさか…!!」
「君が一体何を思ってその単語を口にしたのかは理解出来る。しかしそれは自ら殺された君が言う資格はないと思うよ」
何故そんなことを知っているのか、何故そんなことを言うのか、何故今更になってそんな真剣な顔をしているのか、聞きたいことは沢山あったが、自分の仕出かしたことが今更になってのし掛かってくる重さに、歯を食いしばって耐えるので精一杯だった。
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