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「しょうがないだろ。それに皆一度は思うことだろう?」
多少の不愉快を織り交ぜ苛ついた表情を向けるが、彼は飄々とした独特のにやけ顔で返してきた。しかしやはり自分の顔なのでとても違和感を感じる。
「君の言う皆とは誰のことか知りかねるが、君がそう思うのであれば思い込んでいるがいい」
「やっぱお前ムカつく」
「ただの感想として聞き流しておくよ。それよりもさっき言ったことだが」
気持ちを切り替えるようにフッと一度目を閉じると、彼は先程とは打って変わって真剣な顔をした。
「神様というのはね、本来人に崇められるような存在ではないんだよ。アダムとイヴの話が有名だと思うが、そこでの神は人間の世界を苦痛、病気、老い、欲求等がある世界だと言っている。まぁ地獄のことだね」
「アダムとイヴの話は知ってる。けどそれは聖書の話だろ?仏教やキリスト教なんかは?」
「一緒だろう。信教に則った神様は殆どが人間の世界を罰を受ける場所、あるいは苦痛のある世界だと教えている」
「…じゃあ新米ってどういうことなんだよ。神は生まれるものってことか?」
「生まれるとは語弊があるね。それに新米とは言ったが別に新しく神になったわけじゃないよ、なんていうかね、心機一転?君の解る言葉で言うのは難しいな」
「また馬鹿にして…」
「いやいやこればっかりは君の頭の問題じゃあない。神様とは人智を超えた存在だからね、人間が理解出来ないことの方が多いのさ。例えるならアメリカ人が日本人の擬音語を理解しがたいみたいな感じ」
「まぁ言語が違えば理解はしづらいけど、こうやって言葉が通じてるんだから理由としては分かりにくいな」
「そーだな、けどまた時間を無駄にしたくはないからこれ以上は説明しないよ」
「分かった、続けてくれ」
正直この件もいらない気がするが、彼にとっては無駄ではない話なのだろう。
「ではそんな神様は何故崇め奉られていると思う?答えは至極簡単、神様だから」
「?」
「君は鉛筆は何の為にあると思う?」
「書いたりする為」
「その通り。それと同じで、神だから崇めるのさ」
「結局何が言いたいんだよ」
「別に言い直す気はないけれどもう一度言ってあげよう。君の為に世界を創造したい」
…やっぱりさっきのは無駄な話だったんじゃないか?
「何故?…っていうのはさっき聞いたな。質問を変えよう、どうして?」
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