三章

2/2
前へ
/11ページ
次へ
光が閉ざされた空間に、ライラはいた。体を丸くして、人間に恐怖していた。 「母さん…母さん…怖いよ…」 ガタガタと体は震え、必死に母親ドラゴンのことを考える 『最近の人間は、やたらとドラゴンを殺しているから、ライラがもし人間に捕まったりした時には、母さんが助けに行くからな!』 「でも、母さんはいない… 母さんに守られなくなったら僕……」 溢れる悲しみに、ライラはただ泣いていることしか出来なかった すると、ライラの目の前に、一筋の光が差し込んだ。その光の中から一人の大柄の男が、こちらに向かって歩み寄る 「ガヴヴ……」 ライラは近づく男に唸り声を上げ、「来るな!!」という顔を表しながら、男に牙を向けた 「おいおい、そんなに警戒しなくったって~ほれ」 男が取り出したのは、ドラゴンの大好物の豚の肉だった 肉を見たライラは思わずヨダレが垂れた ここのところ、あまり食にありつけなかったから 「大丈夫、毒とか入ってねぇよ…モグモグ」 「!!?」 その男は、生の肉を構わずライラの目の前で食べた。それを見たライラの食欲は頂点に達し 「ガヴッ!!」 「おい!!今俺が食ってんだぞ!!横取りは厳禁だ!!」 俺はそう言いながらも、必死に肉を頬張るライラを見て、安心の顔つきを魅せた 「モグモグ……おいひぃ…」 「おっ!ようやく口を開いたな~」 「…言葉、通じるの?」 「ああ、通じてるぜ!俺はイグニールだ!!お前、名前は?」 「僕…ライラ」 「ライラ?可愛い名前だな~」 「……………」 僕は今まで人間って、てっきり悪者かと思ってたけど この人…母さんと同じ感じがする 「じゃあライラ、今日から俺がお前の親だ!!だから親の言うことはちゃんと聞けよ……ライラ?」 イグニールの顔を見るライラの瞳からは滝のように涙が零れ落ちた 「それってつまり…父さん?」 「?」 「僕、今まで父さんがいなかったから…父さんって呼んでいい?」 ライラは見た目青年に見えるが、中身はまだ幼い子供だった 一人が嫌なのは、人間の誰でも思うこと、イグニールはライラの頭を撫でた 「父さんと呼んでくれるなら!大歓迎だ!!」 イグニールの胸の中で、強く抱き締められるライラの心は、今だかつてない感覚になった 「痛いけど、暖かい…」
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加