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気が付くと、俺は、彼女のあとをつけていた
両手に本を持って運んでいる彼女の後を、物陰に身を隠しながら後ろからこっそりと尾ける
昨日までの俺は、その光景を見ていたら、きっとこう言うだろう
「ちょっ、ストーカー、勘弁」
しかし、このときの俺はどうかしていた。自分の今の行動を正当化するどころか、今の自分の行為が傍から見たら、かなり痛いものであるということにすら気づいていなかったのだ
何かに夢中になってしまうということは、本当に怖いことである。もちろん、それは後になって実感したのだけど
とにもかくにも、俺は彼女のあとを追っていた
彼女は、これからどこに行くのだろう。その1点のみが気になって、このようなことをしていたのだった
「あんな本もって、どこ行くんだろう…」
独り言が漏れる
しかし、それもしかたないことだ。彼女の持っている本は2、3冊ではなく、おそらく15冊くらいはあったはずだ
しかも、遠目に見たところなのではっきりとは分からないが、すべてがハードカバー。ハードカバーの本がかさばった時の重さは、俺も綾の雑用で経験済みだ(綾の紹介は、後で)
しかし、そんな重いであろう本の山を、彼女は特にふらふらしたりせずに、一歩一歩しっかり歩きながら運んでいる
少し感心してしまった。おれの勝手なイメージだけど、最近の女子高生というのはダイエットだのなんだの言って、線がとにかく細い上に非力だ
彼女は、線は細いが、今現にこうやって重いものを運んでいる。普段から、こうやって重いものを運ぶことが多いのだろう
「おっと…」
とか、なんとか考えていると、彼女を見失いそうになってしまったので、自分自身のスピードも少しだけ上げる
今、俺がいるのは階段の踊り場だ
そして、今、彼女は一つ上の踊り場を曲がり、さらに上の階に行こうとする。次は3階だ
この校舎は4階まである。せめて3階でとどめてほしいものだと、心の中で願いつつ、俺はばれないように後を追う
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