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「あの、部活見学しても大丈夫な感じですか?」
慌てて、言葉をかぶせると、彼女はこちらにも目もくれず
「…いい」
そうとだけつぶやいた
なるほど、無口キャラですね。わかります
「じゃ、じゃあ失礼して」
一応許可はいただいたので、俺は教室の後ろの方にあるイスを一つ自分で持ってきて、そこに腰を掛けた
そして、彼女の方を見つめる。彼女は、特にこちらを気にする様子もなく作業をすすめている
いったん、落ち着いたおかげで、気づいたことが2点あった
一つはさきほど、この教室に入って彼女の姿を見かけなかったのは、どうやら、この教室に一つのドアを隔てて存在する「準備室」にいたかららしかったこと
そして、もう一つは、先ほど見かけたときと違って、彼女が上から白い服を着ていること
いわゆる白衣というやつだ
さほど、身長が低いとは思えない彼女の、それは足元まで長さがある。白衣というものを着たことがなかった俺は、その長さに少し驚いてしまった
しかし、まあ、よく似合っている
メガネもそうだが、その白衣というものは、彼女の知的なイメージに、さらに拍車をかけているような気がした
「あの…何の実験するんですか?」
試験管やら、何かの薬品を取り出している彼女の背中になんとなく声をかけてみた
心臓に悪い、しばらくの間を経て、彼女は小さな声で答える
「定性分析」
ふむ。その言葉はなんだか聞いたことがある
正体不明の物質に、いろんな薬品を混ぜて、その反応を見て物質の性質を推測をするという実験方法だったか、確か
まあ、具体的にどんなものなのか、俺が知る由もないのだけど
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