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彼女は準備室からいろいろな薬品を持ってきて、試験管を並べる
この教室の机は、教室のような個人で使うようなサイズの机ではなく、数人が共同で実験を行えるよう、大きめのものになっている
その大きな机をいっぱいに使って、彼女一人が実験の準備をしている
俺は違和感を感じた
「あの…ほかに部員はいないんですか?」
聞いてから、これは禁句だったか、と少し後悔したが、時すでに遅し、俺は疑問に思ったことを、そのまま口にしていた
俺に背中を向けて準備をしていた彼女は、ぴたりとその手を止める。そして、無言になる
胃に悪い雰囲気になってしまう。おれは少しオドオドしながらイスから腰を浮かす
「いない…。今、部員は私だけ」
いきなり、そんな返事が返ってきた。おれはもう一度椅子に腰を下ろした
ふむ、やっぱりね。なんとなくそんな感じがしたのだ
しかし、そんな部活にどうして一人で入っているのだろう。いや、そりゃ、科学が好きだからなんだろうけど…
なんとなく、違和感を感じた。特に理由なんかはない。なんとなくだ
「そうですか」
返事として、俺が選んだ答えは、一言だった
さきほど浮かんだ疑問をぶつけたい気持ちもあったが、果たして初対面の人にそこまで突っ込んでいいものなのかと、俺の良識がストップをかけたのだ
しかし、まあ
俺としては、部員がほかにいないというのは、正直うれしい事実ではあった。理由は言うまでもないだろう
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