プロローグ

2/4
前へ
/543ページ
次へ
「尊敬する人は、アインシュタイン」 いつだっただろうか、中学生のころだということは間違いないのだが 何かのアンケートで「尊敬する人物」を問われたときに、俺が答えた答えだ 勘違いしないでほしいのは、俺は別に、科学分野に心酔しているわけではないし、得意分野にそれを置いているわけでもない このように答えた理由は、あの有名なアインシュタインの写真 そう。舌を出して、おどけて見せているように映っている、あの写真を思い出して、なんとなくそう答えただけなのだ 俺は写真を見て ああ、表情豊かな人なんだなと、そう思った 科学者なんて人は、みんな難しい顔して実験とかをしているものだと思っていたから、いい意味で、俺のそういう偏見を打ち砕いてくれた人物でもあった しかし、それが、どうして「尊敬」という感情につながるのか、そこの因果関係は分からないし、理解もしようとも思わない どうして、そう思うのか それは、本当に尊敬なんかしていないからだ そう。そのときはアンケートという、俺にとって手間というデメリットはあっても、メリットなんかこれっぽちもない作業に対して、かなり億劫になっていたのだろう その面倒な作業に、俺はなるべく労力を抑えようと、適当に頭に浮かんだ人物を適当に理由をつけて、適当に書いたに過ぎない アインシュタイン。確かにすごい。相対性理論だか何だかを解明した人だっけ? だけど、詳しいところまで知ろうとはもちろん思わないし、どんな人物なのかを調べようとも思わなかった しかし、それでだれかから責められる謂れはもちろんない。俺は普通の中学生だったのだ。思春期真っ盛り、多感な時期に、そんなことで責められては精神がもたない
/543ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2564人が本棚に入れています
本棚に追加