彼女はサクラの香り

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「陸上部に入るよ」 「正気か、お前?」 放課後、生徒たちがぞろぞろと教室を出ていく中、我が旧友小平貞治(こだいらていじ)が放った言葉に、俺は耳を疑った ザ、スポーツマン というような体格や風格を持っているわけではなく、どちらかというと線の細い印象を受ける彼は、しかしそれでも中学時代、俺と青春をともにした男、いわく元野球部だった しかし、だからと言って、こいつが高校になってまで運動部に入るとは思っていなかったのだ。適当な、さほど活動的ではない文科系の部活動に入って、のんびりと高校生活を過ごすものだとばかり思っていた。そんなやつだと思っていた それだけに、俺の驚きも、なかなかに大きいものだった 「量も入るか?陸上部」 挙句の果ては、俺を勧誘までしてくるのか?いったいどんな風の吹き回しだ 「冗談はよしてくれ。何が悲しくて、あんなマゾの集団に俺が入らないといけないんだ」 俺の言葉に、貞治はにやっと笑う 「そうはいってもな、量。やっぱり運動部というのは華やかでいい。なにしろ女の子にモテるからな。それにキャーキャー言われたり、黄色い声援を浴びることだって可能なんだ」 「どれも、意味が同じだぞ。結局モテたいだけか、お前は」 やはり、貞治は貞治だったらしい 「ま、3分の1くらいは冗談だよ。お前も早く部活見つけた方がいいぜ。なかなか決まらない奴は、教師が強制的に決めてしまうらしいぜ」 なんだと!?そんな横暴が、この民主主義の国で許されていいのか
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