彼女はサクラの香り

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しかし、まあ、こいつの決断はなかなかに良いものだったのではないだろうか。おそらく入部を決めるまでは、こいつなりに悩んだり考えたはずだ モテたい その一心で、運動部に入部するあたり、こいつのある意味では一本芯の通った生き方に尊敬の念を抱かないわけではない 「今日、付き合ってやろうか?入部は来週からだから」 彼の、そのわずかに心遣いが含まれた提案に、俺は首を横に振った 「いいよ。入るって決めたんなら、今日も見学に行っておいた方がいいと思うぜ?俺は今日、文科系の部活を見て回るよ」 「お前が文科系ねぇ。似合わない気もするけど」 失礼な。俺はこれでも、なかなかに文化的とご近所でも評判なんだ 「ま、気が変わったら陸上部にも顔出せよ」 貞治は、エメラルバッグというのだろうか、野球部のころに使っていた大きなバッグを肩から掛け、教室を出て行った 「ああ、いってらっしゃい」 たぶん聞こえなかっただろうが、俺は去っていく背中に向かって手を振りながらつぶやいた まあ、動機はアレだけど、頑張ってくれ。元チームメイトとして、せいぜい幸運を祈っているぞ、うん
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