彼女はサクラの香り

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さて 貞治がいなくなった、教室で、俺は椅子に座りながら考えていた カバンの中から、一冊の冊子を取り出す。その表紙には「神原市立第一高等学校部活動一覧」という仰々しい文字が書かれている 表紙の第一高生を模したのであろう、2人の男女のイラストは、満面の笑顔を浮かべていたが、もちろん俺はそんな気にはなれなかった 「おい、今日は野球部見に行こうぜ」 「演劇部の3年生の先輩、めっちゃ美人なんだって」 「ねえ、サッカー部の田辺先輩、見に行こうよ」 ふと周りに目をやると、目をキラキラと輝かせて話をするクラスメイト達 まだ名前も覚えていない彼らを見ながら、俺も重い腰を何とか持ち上げた 「今日は、C棟の方に行ってみるか…」 独り言 ぼそりと呟きながら、俺は教室を出た 第一高校は、A~C棟の3つの校舎に分かれている A棟は、3年が使う教室と、視聴覚教室や音楽室などの特別教室が配置されている。正門に近い方の校舎だ。朝の移動に手間を取られなくていいのは、3年生の特権らしい そして、C棟には、俺たち1年生と2年生の使う教室、それから化学実験室、地学実験室などの理科に関する教室や、そのほか特別教室がある その2つの間にあるB棟は、購買やら学食などがある教室棟だ。昼ごろには、全校生徒でごった返す 文科系の部活動は、主に、これらの校舎内で行われているようだ 昨日訪れたA棟では、吹奏楽部、合唱部などの音楽系の部活動や、茶道部、お料理研究部などに部活動が行われていた。一通り見て回ったが、特に魅かれるものはなかった もともと、特に興味のある分野はない。貞治の言うとおり、もしかしたら、俺のやりたいものは見つからないかもしれないという、一抹の不安が俺を襲った しかし、行動しないことには何も変わらないことも確かなのだ かのサン○リーの社長はこう言ったらしい 「やってみなはれ。やらなわかりまへんで」と その通りだ。俺は冊子を手に、とりあえず今いる1階から2階へと続く階段の方へと足を向けた
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