僕の手を掴んでよ、

2/7
1133人が本棚に入れています
本棚に追加
/254ページ
この恋は全て『身代わり』から始まった。 僕には同い年の従兄弟がいた。その子は僕とは全く違って誰からも愛される子だった。 顔の作りも、性格も、頭脳も、全てはあの子の方が上で。 あの人の心でさえも奪われていた。 あの人、奏人に告白された当初は初めて自分を見てくれたって感動したし、すごく好きになった。なってしまった。 でも、見てしまったんだ。 奏人と満が一緒にいてキスをしていたところを。 そのシーンが色濃く僕の脳裏に焼き付く。 眠りにつく時もまるで戒めるかのように夢のなかで何度もリピートされる。 そのせいで最近は不眠症だ。 寝ることが怖くて堪らない。 そんな日々が続き、寝不足のまま学校へ足を向けた。 学校に向かえば誰もが僕を見て何かを囁き合う、そんな姿が自然と視界に入ってくる。どうせ、僕の陰口でも言っているんだろう。 眉を顰めながら教室へ向かう。
/254ページ

最初のコメントを投稿しよう!