第1話 赤薔薇の夢

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第1話 赤薔薇の夢

気が付くと、私は赤い薔薇の咲き乱れる場所にいた。 (また、この夢なのね…) 辺りを見渡すと風に吹かれた自分の赤い髪が顔にかかる。 (長くて…きれい…) どうやら夢の中の私は綺麗な赤髪の持ち主らしい。 髪が顔にあたる度に少しだけくすぐったい。 けれど、夢の中なので髪をくくる物を持っていない。 ―――最近はこの夢ばかりみている。 16の誕生日を迎えてから、1週間。 毎日毎日、同じ夢。…いい加減飽きていた。 (でも…) 「ヴェルメリオ」 その声に反射的に振り向く。 (私は、この夢はきらいじゃないな) 逆光で顔は見えないけど…多分、青年。 背の高い、(声からすると…)男の人。 さらさらと黒い髪が揺れた。 この人の顔は常に見えない。 ――――――夢だから…。 青年にヴェルメリオと呼ばれたので私は今、ヴェルメリオなのだろう。 「あら?またあなたなの?」 その証拠に自分の意思とは関係なく勝手に口が動き、高圧的な口調で物を言う。 すると、青年は私に近づきながら悪態をつく。 「おいおい…この俺様が来てやったんだぜ?」 (俺様………) ぼんやりと聞きながら、思う。 自分の夢だけど何回きいても呆れる。 私は実際に俺様と言う人を、今だかつて見たことがない。 ――――――さすが夢の登場人物 私が軽く呆れている間にも二人の会話は進む。 「はいはい。それより話って何なのよ?」 「…ヴェルメリオ」 青年の声が真剣になる。
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