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視界にホールが入ると同時に人だかりが目に入った。
「どうしたんですか~?」
お客に安南が質問する。
「電車にひかれた子が車体の下からやっと出てきたんだけどね~、この雪のなかだから救急車も来れないのよ!だからその子が今そこに……」
「ひかれただって!」
驚き風也が思わず発言していた。
ここは駅も線路も近い、だから避難させたのだろうが…
きっと電車が動けなかったのはコレのせいだったのだろう。
「はいはい、お客さん!心配なさるのは分かりますが、緊急事態です。もしものために少しでも早く搬送して貰えるためにもお客さんは自室へお戻り下さい。」
父が満杯になったホールへ向かって大声をあげた。
そうするとみるみる内に隙間だらけになってきた。
その退かれてしまった人が居るであろう場へ人を掻き分けて行った。
その人は布団に包まれていて顔や体は見えなかったが、銀髪の髪がかろうじて見えた。
一見銀髪だからといってお年寄りに思えた。
しかしお客が居なくなったのを確認したところで、彼女は布団から顔をだした。
「瞳ちゃん!」
「……ぅ、アンナちゃん…」
どうやら安南の知り合いらしい。
見た目からして後輩くらいに見えるくらい幼い子だった。
「どうしてまた!」
「また?」
安南の発言はおかしかった。
「瞳ちゃん!命を粗末にしちゃダメ!わたしが居るじゃない!何かあったら相談してってあれほど言ったのに!」
「結局…死んではないもん……ボクみたいな奴、いない方がいい……」
つまりは、自殺行為をしていたわけだ。
自ら線路上に立っていたらしい。
彼女は起き上がって布団を剥がした。
その体は、服はボロボロだったが見えている肌には傷一つなかった。
「もう…帰ります。」
何事も無かったように帰ろうとする彼女を僕ら従業員が止めた。
なんとハチャメチャな子なんだろう?
何が彼女を苦しめてこんな行動をさせるのだろうか?
謎が謎を呼ぶばかりだった。
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