死という概念

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大学構内から門へと続く一本道。 いたるところからセミの声が聞こえてくる。 一週間という短い命を精一杯生きるかのように。 ただうるさいことに変わりはないのだが。 死とはなんなのだろうか。 そんな漠然とした疑問を自分へと投げかける。 というのも、小さいころからの体質というか、誰に言っても面白がられるか気味悪がられるだけなのだが。 僕は幽霊が見える。その所為かは知らないが友達が少ない。 だが、わかったこともある。 何が基準かは定かではないが、ある程度の存在感を持った幽霊は人間とコンタクトを取ることや、物に触れることができるということだ。 つまり、こうして普通の日常を送っている中にも幽霊は、これまた普通の日常を送っているのだ。 僕の前を歩いている人だってもしかすると存在感が異様に強い幽霊なのかもしれないということだ。 一つだけわからないのは、幽霊としての存在感が消えたあとのことだ。 そんなことを考えながら一人で門を目指し歩いていた。 そんなある夏の日のこと。 僕らは出逢った。 「あら、あなたも一人なの?」 門を出ようというところで突然足元から声をかけられた。 小さな女の子、歳は8つくらいだろうか。やたら大人びた雰囲気を醸し出している。 黒く長い髪に黒い服といういでたちで、触れてしまえばどこかへ消えてしまいそうなほどの儚さもある。 「ああ、ちょうど一人になったところなんだ」 女の子の目線に合わせるように腰をかがめる。 ちなみにちょうど一人になったなんて嘘だ。 初めから一人だったのだが、なんとなく不服だ、という理由だけで嘘をついた。 「つまらない嘘ね。私も友達がいなくて暇をしていたの。なにか面白い話でもしてくれない?」 子供のくせにやたらしゃくに障る話し方をするもんだ。
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