死という概念

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「私もって、別に友達はいるからね?」 イラっとはするが、相手は子供。 ここでいかに大人な対応ができるかで人としての器が計られるだろ。 「つまらない話ね、声をかけて損したわ」 それじゃあ、とその場を立ち去ろうとする女の子。 「おい、待てよ」 思わず、女の子の腕をつかんでからハッとする。 周囲の目が非常に痛い。真昼間から大学の目の前で小さな女の子の腕を掴んでいるのだ。 そりゃ見られもするだろう。 僕が他の人の立場なら警察に電話するね。 いそいそと腕を離すと、女の子がぼっそと小声をもらす。 「やっぱり触れた」 「え? どういう……」 「あなた、名前は?」 僕の言葉を最後まで聞かずに質問をかぶせてきた。 なんなんだこいつは……。 「名前は? と聞いてるんですけど」 「……慶介だ。平 慶介(タイラ ケイスケ)。君は?」 「ふーん、ケイスケね。……つまらない名前」 本当に人の話を聞かない子供だ。しかも、人をイラつかせるのがそうとう得意みたいだ。 「おい、今すぐ全国のケイスケさんに謝れよ」 「ついてきなさい」 そう言って、女の子は踵を返した。 くそ、なんなんだよ……。 普段の自分ならついて行きなどしなかっただろう。 だが、その女の子の後ろ姿はどこか惹かれるものがあった。 いや別に、ロリコンというわけではない。 ただ、女の子が性格がという意味ではなく、他の人間とは雰囲気があまりにも違っていた。 人間と幽霊の狭間とでも言うのだろうか。 僕はその謎を知りたくなった。 それだけの理由、単なる好奇心でついて行こうと思った。
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