死という概念

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「ケイスケくんよね、さっきクミカから聞いたから大丈夫。あ、やっぱり言い辛いから呼び捨てにさせてもらうね」 アミカさんは相変わらずの笑顔でフォローを入れてくれる。 そんな優しさに心を満たされる自分もどうかしているとは思う。 「本題に入るわ」 人のことなどお構いなしなその態度に今さらイラつきなどしないが……。 「あなた、幽霊って信じる?」 それは唐突な質問だった。 「まあ、信じているっちゃあ、信じてはいるが……」 まったくもって話しの意図が見えない。 突然通りすがりの女の子について来いと言われ、ついて行った先で幽霊は信じるか? と聞かれる。 新たな宗教の勧誘方法か何かだろうか。 そうとわかれば立ち去るのが一番、あいにくと僕は宗教とかには興味ないんだ。 「えっと、宗教の勧誘なら間に合って……」 「何を言っているの? 少し人の話を聞くってことをしなさい」 だめだ。何を言っているのかわからない。日本語か? 今のは日本語なのか? 10歳以上離れているであろう人の話を聞かない女の子に、話を聞きなさいと言われた。 後世に笑いものとされ続けるであろう、僕なら腹を抱えて笑い転げるんじゃないだろうか。 だが、当事者となれば話は別だ。
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