第3話 『高校生』

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パリのファッションモード専門学校に行くのに、お金を貸してほしい旨を伝えて、 「必ず5年以内に返します」 と頭を下げると、祖母はクスクスと笑った。 「まぁまぁ、そんなに畏まらないで。ひとつだけ聞きたいのは、どうしてお父さんとお母さんにそれをお願いしないの?」 紅茶の用意をしながら優しくそう尋ねる。 「……尊敬してない人を頼れない」 目をそらしながらそう告げると、祖母は「そう」と小さく頷いた。 「どんな経緯でパリへと決めたのかは分からないけど、きっと呼ばれたのね。 運命が動く時って、少し乱暴に運ばれることあるのよ」 トポトポと紅茶を淹れながらそう言う。 その言葉を黙って聞きながらも、よく理解できずにいた。
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