第3話 『高校生』

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「いってらっしゃい、パリへ。あなたにとってきっと大事なことだと思うから」 祖母はそう言って優しく頬を両手で包んだ。 優しくやわらかな香りが包む。 「本当に樹利は眩しいくらいに美しく成長したわね。これからもきっと更にあなたは磨かれるわ」 そう言ってそっと額を合わせた。 奔放な両親に囲まれて育つ中、その祖母の存在がどれだけ自分の支えになったか分からない。 幼い頃は夏休み、冬休みの度に、ここに来ていた。 思えば中学に入ってからは、ほとんど顔を出していなかった。 「……ありがとう。帰国する時は必ず顔を出すよ」 そう言うと祖母は嬉しそうに微笑んだ。
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