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夢の中の世界。ずっと自分はそう思い込んでいた。
だって余りにそこは現実と乖離していたから。
だって余りにそこは自己願望を叶えすぎてたから。
自分は何も無い空虚な世界を歩く。ひたすら歩く。何も無さすぎて少し複雑な気分がする。
しばらくすると、目の前にしゃがんでいる一人の少女がいるのに気付く。どこかふさぎこんでいて悲しげな様子だった。
近くまで近づく。そして、その少女は金色の髪をしていて、双眸には涙がたまっていることが見てとれた。
そんな少女に自分はふと話しかけた。
「どうして君は泣いているんだ」
「悲しいから、抑えきれないくらい悲しいから」
「どうして悲しんでるの?」
そう自分が言うと、少女は泣き笑いながらこちらを向く。
「あの人がこの世界に絶望したから、あの人が悲しみうちひがれているから私も悲しいの」
それに自分はどうしてか少し胸が打たれていた。
「君の名前は?」
「……リンよ」
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