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「ねぇ、樹利、絶対お金持ちになってね。豪邸を建ててね。あなたなら必ずそうなれると思うのよ」
「……約束はできないけど、まぁせいぜいがんばるよ」
「それじゃあ、駄目。約束よ。
でも、不思議。樹利は結構お金稼いでるのにどうして、いつまでもこんなボロアパートにいるのよ」
「買うときはいい物を買うけど、借りる時は最低限でいいと思ってるんだ」
「意外に堅実なのね」
桐華はそう言って笑顔を見せた後、息をついた。
「樹利は私の過去を聞いても軽蔑しないのね。過去のこと話しながら……本当はドキドキしてたのよ」
と呟くようにそう言った。
「しないよ……気持ちは分かるし」
と桐華の頭を撫でる。
桐華の貪欲なまでのハングリーさも、すべてを貪るように愛情を求めるその姿を理解できた気がした。
しかしそんな桐華に戸惑うことも多々あった。
彼女が求めるほどに惜しみない愛情を注ぐことが出来なかったからだ。
『愛してる』と言えない自分には、その欲求が苦しかった。
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