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『リンは離婚してふさぎこんで仕事ができなくなるし、会社は借金を抱え始めるし社員は逃げ出すし大変なのよ。
……樹利、あなたしかいないのよ、リンを助けられるのは。お願いよ、あの子を助けてあげて』
電話の向こうで泣きながら訴える隆に、何も言葉が出ないほどに衝撃を受けていた。
あのリンがそんなことになってるなんて……。
いてもたってもいられなくなった。
これまで築き上げたものをすべてて捨てて、すぐに帰国する決意をした。
最後の賭けのように、桐華に一緒に帰らないかと、話を持ち掛けたが、首を縦には振らなかった。
「私は嫌よ、日本には行かないわ、ようやくこれからなのよ。やっと新しい道が見えてきたんですもの」
それは予想通りの答えで、少しホッとする自分もいた。
「そうか……それじゃあ、俺だけ帰国するよ」
そう告げると桐華は切なく顔を歪ませ、強く抱き着いて来た。
「……離れても、私の心はあなたのものよ」
「わかってるよ」
桐華の心が俺にあるのは、ちゃんと分かっていた。
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