サクラの蕾が開く頃ーー二人の年月

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きっとさっきの彩の話から、彩の答えを予測したのだろう。 それでも、私だったら自信がない。知っている私や敦志にはサクラとエリカさんが結びつくのだけれど、彩にその繋がりなんてわかりっこない。 「……ねぇ、パパ。エリカちゃんはさぁ、もう天国にいるんだよね?あんなふうに写真飾ってある絵を見たよ。」 「……ああ、そうだよ。よく気づいたね。」 敦志はしゃがんで彩の目線に目を合わせて、その小さな彩の頭を撫でた。 「じゃぁ、行く。パパのお友達だもんね?エリカちゃん、忘れなければ寂しくないもんね!彩も忘れないようにする!」 言うが早いか、我先にと改札に走ってそれから後ろを振り向いた我が娘。 もうすぐ四歳になるとはいえまだまだ小さな彩。 そんな彼女がとても眩しく、そして大きく見えた瞬間だった。 「優しい子だね。」 「ああ。ほんとに。奈々子がそう育ててくれたんだよな。ありがとう。」 「敦志こそ。ありがとう。」 あなたは大切だと、その想いは子供にきちんと伝わる。 そしてその想いはまたその小さな命からいつか育まれる新たな命へと繋がっていくはず。 再び訪れたエリカさんの仏壇の前で、手を合わせて彼女に心の中で話しかけた。
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