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「だー、疲れた」
「燃え尽きたぁ」
「無難だな」
「ああ、お帰りなさい」
「おかえり♪」
「そろそろ帰ろうぜ!」
「もうですか」
「もういい時間だぁ」
「え?」
携帯に目をやると時刻は20時を過ぎていた。
「本当だ……」
「俺は10時までに寝ないと死んでしまう。早くいくぞ」
「なんですか、それ」
「今日は君のおかげで楽しく過ごせた。感謝している」
「いえいえ、こちらこそありがとうございました♪」
「またのご来店をお待ちしております♪」
そう言うと先輩たちはそそくさと車の中に入ってしまった。
「いつも急すぎですよ……」
「ふふ、後輩くんもじゃあね」
正直もう少し話していたかったけど。
「あ!そうだ。これ持っていてください」
「え……?」
自分は持っている時計を手渡した。
「来年返してください」
「うん、わかった」
「じゃあ、またですね」
「うん、またね」
自分も車に乗り込み、名残惜しみながらも帰路へとむかった。
帰る途中、浜の名前が記された看板を見つけた。看板には’御崎浜‘と書かれている。
「う゛ぞ!?」
同じくその看板を見つけた先輩がなんとも間抜けな声を出しながら驚いている。
「ど、どうしました?」
「やべーよ、御崎浜って有名な心霊スポットじゃんか!あそこに10時以降までいると幽霊に祟られるって話だぜ!!」
「だから長居は無用だと言ったはずだ」
「先輩、分かっててずっといたんですか?強心臓ですね」
「それを言うなら彼女のほうがそうだろう」
言われてみればそうだ。
「それぐらいは重々承知なんだろう。彼女もすでに帰ったはずだ」
「そう……ですね」
店員さんのことも気になったが、聞いてるうちに怖くなってしまった。自分は少し急ぎめに車を走らせた。
これが去年の夏の思い出だった。
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