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時は遡り1年前。
「混みすぎだろ…」
自分たちは絶望していた。
今海に来ている。来ているはずだ。
しかし、肝心の海や砂浜は人混みで埋め尽くされ、ほとんど顔を隠してしまっていた。
「どうするよぉ?」
1人が言った。
「こんなんじゃ入った気がしないよな。市民プールにでも入った方がマシなんじゃね?」
もう1人が言った。
「……でも、ここまで来たのに海に入らないのはつまらないだろ」
さらにもう1人が言った。
「そうだよなぁ。勿体ないよなぁ」
「きっと、どこに行っても結果は同じなんでしょうね」
自分が言った。
実のところ、この人に溢れた海景色はもう何度か見ている。
大学のサークルメンバーで海に来たはいいが、どこもかしこも、人。人。
海沿いを車で走り、何ヵ所か見て回ったが、どこもこの惨状はかわらなかった。
「仕方がない、ここで我慢ですね?」
「うーん……」
1人がなにかを言いたがっている
……。
「もう少し探してみますか?まだ昼前ですし」
「うん?そうしちゃう?そうなっちゃう?」
どうやらこの一言が聞きたかったらしい。
直接言えばいいってのに。恐らくずっと自分に運転手を任せていたから言い出しにくかったんだろう。
まったく、妙なところで気を使うんだよなこの先輩たちは。
「では行きましょうか。時間が惜しいです」
「「「おー」」」
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