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あれから海水浴場を出て10分ほど車を走らせていた。
しかし、どうやら先程で最後だったようだ。もう降りられそうな場所がない。
「あちゃーいい場所ないね」
「そうだなぁ」
「失敗したな」
皆落胆の様子。
「なんだか岩場が増えてきましたね」
さらに車を走らせ、5分。事態はさらに悪化した。
「あ……道、海辺から外れちゃいますね」
「おいおい、マジかよぉ」
「嘘だ!後輩!嘘だと言ってくれ!」
「いや、ホントですけど」
皆の思いと裏腹に道は海辺を逸れ、しだいに山道に入っていった。
「参ったなぁ」
「今日は諦めるか?」
「お前……何を言っていやがる?」
「このまま行っても無駄そうですから引き返しましょうか」
「だな」
自分は引き返そうとギアをバックにいれようとしたが、突如先輩の1人がそれを制した。
「ちょっと待て。あそこに海に出られそうな道があるぞ」
「へ?」
注意深く回りを見渡した。
あった。5メートルほど先の左手に獣道らしきものがある。たしかに方角的には海には出そうだ。
「でもあれ大丈夫ですか?」
「大丈夫なんじゃないかぁ」
「大丈夫、大丈夫」
「なんだかテキトーですね」
運転するこっちの身にもなってほしい。
「行って見なければわからないだろう。だが逆に言ってみれば、行けば分かるってことだ」
「わかりましたよ。行きましょう!」
自分は半ばヤケクソになりながらも、道と言うにはお粗末すぎるところを走らせた。
車が揺れる。なんだか気持ち悪くなってきた。
「後輩。以外と運転ヘタクソだな」
「下ろしますよ?」
「車が悪いんだな」
「これ、自分の愛車なんですけど」
「……俺たちが悪い」
「よろしい」
くだらない話をしながら暫く進んでいると
「お!山を抜けそうだぜ」
「あ……本当ですね!」
「やっと着いたかぁ」
そんなことを言ながらも、皆内心では不安だったんだと思う。
でも、現実は皆を良い意味で裏切ってくれた。
山道を抜けた先、やっと自分たちは海を見ることが出来たのだ。
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