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クラッと目眩がした気がした。
男の僕でも一ノ瀬さんの魅力に吸い込まれてしまいそうだ。
中学の事がなければ、今頃ファンクラブが出来ていたかもしれない。
「わ、分かりました。特別です」
「ありがとう。じゃあ行こう」
そう言って、僕の手首を掴んで歩き出そうとする。
しかし、一ノ瀬さんが僕の手首を掴んでいるその上の辺りで、莉久が僕の手首を掴んだ。
「春から手を離してください」
「何で?」
「何でって……貴方と居ると春が迷惑だからです」
「迷惑か?アリス」
「いえ……迷惑なんて」
「本人が迷惑じゃないって言ってるけど」
莉久は悔しそうに唇を噛む。
「引き留めたい理由はアリスが……だから?」
何故かだからの前だけ声に出して言わなかった。
口パクでは何を言いたかったか分からない。
うき……かな。
意味が分からない。
「ち、違います!」
僕とは違い、莉久には伝わったみたいで動揺している。
それを見ながら一ノ瀬さんは笑っていた。
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